活動報告

不妊治療と仕事の両立事例インタビュー 第四弾 【メルクバイオファーマ株式会社 様】

不妊治療と仕事の両立事例インタビュー 第四弾 【メルクバイオファーマ株式会社 様】

現在、国内では政府による不妊治療と仕事の両立に向けた取り組みが急速に進んでおり、不妊治療と仕事の両立を行っている企業様への注目が高まりつつあります。

今後企業においては、従業員が安心して不妊治療と仕事を両立できる環境を構築していくことが重要となるでしょう。

そこで、既に支援を行っている企業様へ、先進的な取り組みやご経験についてインタビューさせていただき、ご紹介していきます。

お話を伺った方:メルクバイオファーマ株式会社

【メルクバイオファーマ 様】不妊治療と仕事の両立支援制度

YELLOW SPHERE PROJECT

〈Yellow Leave 不妊治療のための有給休暇制度〉
〈Yellow Point生殖補助医療費に対する助成制度〉
〈Yellow Support 妊活や妊娠・出産に関する教育啓発〉

インタビュー内容

―まずはメルクバイオファーマ様の事業内容についてお伺いしたいと思います。


メルクバイオファーマ株式会社はメルクグループジャパンの1社です。メルクは、サイエンスとテクノロジーのリーディングカンパニーとして、社会的な課題に対する新たなソリューションの提供を追求し、よりよい社会にするための製品開発を続けています。グループの全従業員数は1,000名を超え、エレクトロニクス、ライフサイエンス、ヘルスケアの3つのセクターでビジネスを展開しています。ヘルスケア・ビジネスの日本法人である当社は医療用医薬品、医療機器等の輸入、製造、販売を行っています。


―特徴ある制度と聞いておりますが、妊活や不妊治療を支援する制度を設けた背景を教えてください。どのようなきっかけでYELLOW SPHERE PROJECTを始めたのでしょうか?


きっかけになったのは、社員が医療従事者の方々から、働きながら治療を継続することの大変さをお聞きしたことでした。具体的に社員に対する支援制度として実現していくにあたり、どういうプログラムにして、何を目指すか、患者さんを支援するグループの方にお話しをお聞きしたり、すでに制度をお持ちの企業様の事例を調べたりしました。そこでは治療のことはもちろん、仕事を続けながら治療することの困難さ、治療していることを周りに言えないこと、といった声をお聞きしました。

2018年に事業部から「まずは自分たち自ら取り組んでいこう」と声があがり、役員会議の議事に取り上げてもらい、討議の結果、満場一致で、グループ全社で長期的な視野に立って取り組んでいくことが決まりました。

当社は製薬会社であり、不妊治療に関する製品の製造販売を行っております。企業として、製品の製造販売だけでなく、サイエンスとテクノロジーによって、働く人々の環境を整える支援をすることも大事なことだと考えています。不妊治療領域で事業をしているからという理由だけではなく、活気溢れるサイエンスとテクノロジーのカンパニーを標榜する企業としての取り組みを通じて社会への貢献にかかわることができれば、という思いでYELLOW SPHERE PROJECTの取り組みが始まりました。


―素晴らしいですね。制度を作るとなると、疑問を持たれたり様々な意見が社内で出ると思いますが、それらをどういう風にクリアしていきましたか?


役職や立場を超えて、みんなで一緒に考え、取り組んで行くこと。誰にも関係することであり、誰でも参加できる、ということを呼びかけていくことにしました。


―人事部中心に発信され、制度を作っていくことが多いと思いますが、ビジネス側から発信されたのは珍しいかもしれませんね。不妊治療だけを特別扱いするのは良くないのでは?といった風潮は他企業ではよくありますが、そのような問題は起こりませんでしたか?


そうしたことはなかったように思います。当社自らが不妊治療に関わる事業をしているため認知や理解されている、という理由もあると思いますが、困っている方々を支援できないか、という社内風土が支えになっていると感じています。


―社員の方々の理解と努力のもと完成したのですね。それでは、YELLOW SPHERE PROJECTの内容をお聞かせください。


YELLOW SPHERE PROJECT(通称YSP)では具体的に3つの柱を立てて取り組んでいます。
 一つ目は不妊治療のための有給休暇制度です。不妊治療を目的とした有給休暇の付与です。(Yellow Leave)。
 二つ目は生殖補助医療費に対する助成制度で、年間で10万円の助成です。(Yellow Point)。
 三つ目はYSPの特徴として、妊活や妊娠・出産についての理解を促す教育啓発です。当社の医師、看護師、薬剤師や元胚培養士など専門的な知識を有する社員が従業員への教育啓発を行うことです。(Yellow Support)。


―どのようにして社内でこの制度を浸透させているのでしょうか。


人事制度として紹介するだけではなく、妊活を支える「サポートの輪」を広げる目的で、皆さんにとって身近なことと感じてもらえるようなアプローチを検討しました。YSPのアイコンを月にしたのは、女性を連想していただけるかな、という期待から、そして、Yellow Leave やYellow Pointの人事制度を含めてこのプロジェクトの頭文字には「Yellow」を付けました。月と言えば日本人は「中秋の名月」を思い起こす方もいらっしゃるのではないでしょうか。プロジェクトは毎年「中秋の名月」の時期に活動のピークを迎えられるようにデザインしています。社内では一年に一回のこの時期に妊活支援の輪を広げる目的で、妊活や不妊治療に取り組む方々を応援するメッセージを募集し、ポスターを制作して社内に掲載しています。応募されたメッセージには、ほろっとするものや応援の意図が込められているものもあり、中秋の名月を盛り上げ、妊活サポートの輪を広げる大切な活動の一つとなっています。


―良いアプローチですね。制度を作ったものの忘れられてしまったり、発信のタイミングを見失ってしまう企業が多いと思います。しかし、毎年必ず来る中秋の名月が背景にあれば記憶にも残りやすいですよね。この時期にメルクさんだけでなく、様々な企業の方へ広報活動として発信する時期にもぴったりですね。


知っていただくには継続して情報発信し、妊活サポートの輪を広げていく努力を続けることが大切だと考えています。
当社ではYellow Sphere Project をファミリー・フレンドリーな社会構築への支援と考え、社内外での啓発活動を行っています。妊娠を希望してもなかなか叶わないという“社会課題” に対して、製品をお届けすることにとどまらず、より多くの方に適切な情報を「伝え」、サポートの輪を「広げ」、人々の充実した暮らしという「未来をつくる」ことへの貢献を目指します。


―企業の妊活支援についてのお考えを教えてください。今後社会全体として、企業はどのような働きかけを行っていくと良いと考えますか。


私たちはサイエンスとテクノロジーが世の中をより良くする、という考えを持ち、より楽しく持続可能な暮らしの実現を目指しています。製品の製造販売にとどまることなく、社会的な課題へのソリューションを提供したいと考えています。
例えば、日本は人口減少という課題に直面していて、これ対して「出生率の改善のみを目指すのではなく、ファミリー・フレンドリーな社会を構築する」ことが大切である、という考え方を持つことです。
ファミリー・フレンドリーな社会構築に向けた、ファミリーづくりにやさしい、思いやりのある企業カルチャーが様々な企業にて醸成されていく機会が増えることを期待します。


―この度は大変貴重なお話をありがとうございました。


メルクバイオファーマ株式会社 様 YouTube 【Our Future ― 新しい命を宿す為の努力を、皆が応援する社会へ― | YSP】