活動報告

不妊治療と仕事の両立事例インタビュー 第一弾【大東建託株式会社 様】

不妊治療と仕事の両立事例インタビュー 第一弾
【大東建託株式会社 様】

現在、国内では政府による不妊治療と仕事の両立に向けた取り組みが急速に進んでおり、不妊治療と仕事の両立を行っている企業様への注目が高まりつつあります。

今後企業においては、従業員が安心して不妊治療と仕事を両立できる環境を構築していくことが重要となるでしょう。

そこで、既に支援を行っている企業様へ、先進的な取り組みやご経験についてインタビューさせていただき、ご紹介していきます。

お話を伺った方:大東建託株式会社 本社 人事部ダイバーシティ推進課 湯目様

【大東建託株式会社 様】不妊治療と仕事の両立支援制度

【不妊治療休暇(家族休暇)】

年次有給休暇とは別に、年5日間の有給を取得可能
1時間単位での取得も可能

【不妊治療休業】

妊娠が判明するまで休業できる制度(最長3年)を導入

【不妊治療補助金制度】

不妊治療を行った従業員に対し、20,000円/年(最大5年)を補助する制度

【短縮勤務】

一定の範囲内で、就業時間の短縮や欠勤が認められる制度

インタビュー内容

-不妊治療と仕事の両立支援について導入した経緯を教えて下さい

2019年4月に、女性活躍推進を目標とした全従業員が活躍できる職場環境を作るためのプロジェクトを立ち上げました。女性が活躍するためには、まず、様々なライフイベントが起きても、両立しながら長く働いていける環境があることが大前提だと考え、両立支援制度の見直しから始めました。その中で、時折、不妊治療中の方からの制度の問い合わせや相談があったこともあり、結婚妊娠出産と続くライフイベントの中で、今後は不妊治療も入れるべきではないかと考え、今回の制度の導入になりました。

-導入にあたり、苦労や反発等はありましたか?

まずは議案を会議にかけるにも、社内に不妊治療に対しての知識が無いので、通院の流れや休みの頻度から説明を始めました。また、社内でどのくらい不妊治療をしている人がいるのか実態が掴めていませんでしたが、アンケート等をしてもデリケートな部分でもあるので恐らく正確な数値は出せないと思いました。そのため、会議では正直に「どのくらいの人がこの制度を必要としているかは分からない」と伝えました。「その制度を入れることで休みが増え、仕事が回らなくならないか?」との質問に対しても、数値が出ていないので例えば「少人数なので大丈夫」等の具体的な回答もできません。そういった意味では他の制度の導入とは立て付けが違い、必要性をどう理解してもらうかを考えることが大変でした。
最終的には、不妊治療だけではなく妊娠、育児、看護、介護等様々な両立支援制度を拡充することで、“当社は、必要な時に必要な制度を利用するこができ、長い目で見て活躍していける、従業員の人生を応援していく会社である”ということを社内外へ伝えたい、という提案をしました。

-“不妊治療休暇”の申請方法はどんな流れですか?

通常の休暇制度と同じ方法で申請してもらいます。業務に支障が無いよう直属の上司には伝えている方が多いみたいですが、“家族休暇”という名称で申請してもらうので、“不妊治療休暇”で休むことは周りには分からないように申請できる仕組みになっています。
※家族休暇:不妊治療休暇、マタニティー休暇、看護休暇(子及び家族)、介護休暇の総称

-どのくらい利用されているかは分かりますか?

表面的には分からない仕組みになっていますが、人事部ではデータとして“家族休暇”の内訳は把握できるようになっております。導入して1年弱で、“不妊治療休暇”については、実際に10名以上の方が利用しているようです。5日分を時間休として使うこともできるので、時間休として利用している方が多いようです。
“不妊治療休業”の方はまだ例がありませんが、間もなく入られる方がいます。

-“不妊治療休業”は最長3年とのことですが、他の企業さんと比較しても長い期間ですよね?

当然のことながら、治療されている方は休みたくて休む訳ではないと思うので、制度として悪用されることはないだろうと判断し、期間を設定しました。希望される方がいるのなら、その期間は治療に集中してもらい、後々力を発揮してもらえれば、企業側にもメリットがあると考えました。

-制度導入までの期間はどのくらいですか?

実はあまりかかっていないんです。会社全体の動きとして、最短で導入する流れが出来ているので…立案からと考えると数ヶ月かかりましたが、導入を決めてからは早かったです。
休暇休業制度の導入は、休みを取ることによって出る業務への影響など、その体制を整えることが一番大変だと思うんですが、当社は、数年前から年次有給休暇の取得推進に力を入れていたことで、既に、誰かが休むということが珍しくない風土や体制が出来ているので、“休暇の取得理由が増えるだけ”という認識で済んだ部分があるかと…そういった意味では、有休を促進していく時のほうが大変でした。

-そうした風土はいつ頃からありましたか?

元々は、建設業ということもあり男性社員が多い職場で、あまり休みやすい風土ではありませんでした。ここ数年、ダイバーシティの推進や働き方改革の波もあり、ワークライフバランスを意識した働き方に変えていこうということで4~5年前から本格的に取り組んできました。
今回の不妊治療に関する制度でも、治療中の方からは「周囲に対しての後ろめたさがあったが、応援されている感じがして安心した」という声、周囲の方でも、「こういうところにまで目を向けているのを見て、会社が変わってきているという印象を持った」などの反応がありました。

-会社から、これからこんなサポート始めるよ、っていう一言、この動きだけで従業員の印象が変わりますよね。

本当にそうだと思います。会社がこんなことにも目を向けてくれること自体が嬉しかったとの声を聞くので、そういうことなんだと思います。

-とても参考になります。もし、他の企業さんに伝えるとしたら何かありますか?

導入した一つとして、治療をしている数年を気にするよりも、長い目で見た時、何十年と活躍をしてくれる人財であるということを会社側が認識し、それを「応援する」というメッセージとして出してくれるというのが大事なのではないかと思います。
育児もそうだと思うのですが、一昔前は育児休業や時短勤務を煙たがっていた風土もあったと思いますが、その期間は一時的のことで終わりがあるんです。制度を利用した方は、後々、両立してこられたのは制度を利用できたから、サポートしてくれた周囲の人のおかげと、きっと恩返しをしようと思います。確かにそこの期間は、パフォーマンスが若干落ちる場合もあるかもしれないですが、長い目で見たら、その時期の経験を活かして、貢献しようと、力を発揮してくれる人の方が多いはずです。企業にとっても、プラスの効果があるではないでしょうか。

-とても有り難いお話です。実際に導入されている企業さんのお話は重みが違います。最後に今後の課題はありますか?

制度を立ち上げたばかりということもあり、育児と違い経験者も少ないので、不妊治療の流れがこういうものだとか、世の中にこのくらい治療者がいると言われているとか、知識が全体的にないので、今後は周囲の理解を深めていかなければいけないと思っています。


このたびは大変貴重なお話をありがとうございました。